著作に励まれる親鸞聖人

 
75歳を過ぎられてなお、親鸞聖人は著作に励まれます。
主なご著書とお書きになられた年代を挙げてみましょう。
76歳
 浄土和讃
 高僧和讃
78歳
 唯信鈔文意
83歳
 浄土文類聚鈔
 愚禿鈔
84歳
 往相廻向還相廻向文類
 入出二門偈頌
85歳
 浄土三経往生文類
 一念多念証文
 正像末和讃
86歳
 尊号真像銘文
88歳
 弥陀如来名号徳
ほかにも、親鸞聖人が書写・編集なされたご著書は、全部で二十冊以上
知られています。しかも、そのほとんどが76歳以降に書かれているのです。
ご高齢になられるほど、執筆に力を込められていることが分かります。
「体の自由が利かなくなった分、筆を執って仏の教えを伝えよう」との
並々ならぬ気迫が伝わってくるようです。言っても言っても言い尽くせない、
書いても書いても書き尽くせない報恩の情あふるる聖人のお姿が
彷彿(ほうふつ)といたします。
 
「たとえ、どんなに冷笑されようと、同じことを繰り返し繰り返し書いて、
 なんとか分かってもらいたい」
との親鸞聖人の熱いお気持ちが、次のお言葉からも汲み取れましょう。
 
文字をあまり読めない田舎の人たちにも、
何とか分かってもらいたいと、同じことを繰り返し重ねて書いた。
教養ある人はおかしく思うだろう、あざける人もあるだろう。
しかし、どんなそしりも甘んじて受け、誰にでも分かるように伝えたい。
この一心で繰り返し記すだけだ。
 
田舎の人々の文字の意も知らず、あさましき愚痴きわまりなき故に、
やすくこころえさせんとて、おなじことを、度々とりかえしとりかえし、
書きつけたり。
心あらん人はおかしく思うべし。あざけりをなすべし。
しかれども、大方の謗りを省ず、一筋に愚かなるものを
心得やすからんとて記せるなり。(唯信鈔文意)
 
親鸞聖人は、どんな人にも何とかこの真実を伝えんと
なされていることが分かります。
その御心はそのまま、後の世の人々、今日の私たちに伝えたい
という願いでもありましょう。
800年の時を超え、今こうして本当の仏教が聞けるのも、
親鸞聖人がたくさんのご著書を残してくだされたからに違いありません。
 
索引: 親鸞会『親鸞聖人とは』