親鸞聖人が世界で初めて僧侶の身で公然と結婚された理由 |
破戒僧と呼ばれても肉食妻帯した親鸞聖人の真意は?
親鸞聖人は31歳で結婚(妻帯)なされました。
今日なら「おめでたいことだ」で終わるでしょうが、そうはいきません
でした。なぜなら当時、僧侶の結婚(妻帯)は固く禁じられていたからです。
そんな中、僧侶の身で公然と結婚された親鸞聖人。
実はこれが世界初であり、大事件だったのです。
また親鸞聖人は、「肉食(にくじき)」といい、一般庶民と同じく
魚などの肉も食べられました。肉食は、生き物を殺す罪として
僧侶の厳禁事項でした。中国や韓国、東南アジアの仏教国では、
今でも僧侶の肉食妻帯は禁止されています。
そんな中、親鸞聖人は公然と肉食妻帯を断行されました。
世は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、親鸞聖人は
「色坊主」「堕落坊主」と罵倒され、破戒僧として石を投げられ
槍まで突き付けられたのです。
ですから肉食妻帯は、命がけの断行でした。
これは大変なことであり、文豪、夏目漱石は「大改革」と表現し、
次のように語っています。
「その時分に、(略)思い切って妻帯し 肉食をするということを
公言するのみならず、断行してご覧なさい。
どの位迫害を 受けるか分からない」
「親鸞聖人に初めから非常な思想が有り、非常な力が有り、
非常な強い根底の有る思想を持たなければ、
あれ程の大改革は出来ない」
(夏目漱石「模倣と独立」)
夏目漱石は、親鸞聖人の肉食妻帯の決行を
「非常な思想が有り、非常な力が有り、非常な強い根底の有る思想」と、
「非常」という言葉を三回も重ねて驚愕しています。ここからも、
どれほどの大改革であったかをうかがい知ることができましょう。
ではなぜ親鸞聖人は、これほどまでの非難を覚悟の上で
肉食妻帯なされたのでしょうか。
なぜ肉食妻帯を決行されたのか。
それは、すべての人がありのままの姿で平等に救われるのが
本当の仏教であることを身をもって明らかにされるためでした。
今日でも仏教の名のもとに、肉食も妻帯もせず、髪をそって
修行に励む生き方が仏道と信じ、他人にも勧めている人があります。
欲もおこさず、微塵の罪もつくらず、厳しい戒律を守ったものだけが
救われると思っているのです。しかし、もしそれが本当の仏教なら、
家庭を持ち、肉を食べながら生きている私たちには、
縁のない教えになってしまいます。
私たち人間は、欲も起こすし、腹も立つ。恨んだり愚痴ったり、
勝るをねたみ、我が身かわいさにウソをついたり、ごまかしたり。
たわいもないことで喧嘩をしては口や体で人を傷つける。
色欲の情もおきるし、うまいうまいと肉を食べて生きてきた。
それが人間。これからだってそうでしょう。
もちろん、開き直ってやりたいようにやれといわれているわけでは
ありません。悲しい人間の限界をよくよく知られた上で、
そういう者をこそ見捨てずに救うのが、
まことの仏の心なのだということを明らかにされたのです。
親鸞聖人は、私たちのこのような心や日常の実態を全て理解され、
そんなあなたこそが、本当の幸せになれるのだと
手を差し伸べてくだされたのでした。
欲もあり、怒りも起こす人間が、ありのままの姿で救われる。
それが、本当の仏教だと示されたのが肉食妻帯を断行された
親鸞聖人の心だったのです。
索引 : 親鸞会『親鸞聖人とは』
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